【本】タニタの働き方革命(前編)
こんにちは。権藤優希です。
今回紹介する本は、谷田千里(たにだ せんり)さんおよび株式会社タニタ編著、
“タニタの働き方革命”
です。
家庭用のヘルスメーターを世界に先駆けて製造し、「タニタ食堂」などでも有名な企業です。
2008年から同社の代表取締役社長を務められる著者は、創業から数えて3代目にあたります。
本書は2部構成になっています。
第1部では、同社が2017年から取り組んでいる独自の働き方改革、通称「日本活性化プロジェクト」の内容や、創設に至るまでの背景が書かれています。
第2部では、「日本活性化プロジェクト」の制度を利用して働く人の生の声が、インタビュー形式でまとめられています。
変化の激しいいまの時代、私たちはどのような働き方を求められるのか。
また、人がいきいきと働くために、会社がすべきことは何なのか。
前編では、第1部の内容に注目します。
大事なのは主体性
著者は、昨今の働き方改革において残業削減ばかりが先行する世の中の風潮を危惧されています。
改革の本質は残業時間の削減ではなく、働く人ひとりひとりが主体性を持って働き、生産性を高めること。
そのような優秀な人材がタニタで働いてくれるためにはどうすればよいか、と考えた著者は、会社の人事制度を見直し「日本活性化プロジェクト」を始動されます。
「この仕事をやり遂げたい」「自分の能力を伸ばしたい」と主体的に仕事に取り組むことができれば、人はやり甲斐や、自身の成長を感じることができます。
もちろん、壁もあるでしょうが、主体的に定めた目標であれば、それをも乗り越えていけます。限られた時間に最大限のアウトプットを出そうという意識も高まり、働き方にメリハリもついてくるでしょう。そういう主体性を持つ人が多い職場は活性化し、企業も成長するはずです。(本書p11より)
会社員とフリーランスのいいとこ取り
では、「日本活性化プロジェクト」とはどのような制度なのでしょうか。
希望社員を雇用から契約ベースに転換することで、主体性を発揮できるようにしながら、本人の努力に報酬面でも報いる社内制度。
経営者感覚を持って、自らの仕事内容や働き方をデザインでき、働く人がやりがいを持って心身ともに健やかに働ける「健康経営」の新手法。(本書帯より抜粋)
これは、希望者の雇用形態を社員ではなく、税制面で有利なフリーランスに変更して、働く人の手取り収入の最大化を目指すというもの。
社員時代に会社が負担していた社会保険に相当する額も、報酬として支払われるそうです。
また、個人事業主であるため働く時間や場所は自由に選べますし、社内の業務を遂行する傍らで社外の仕事を増やしてもよいのだそう。
まさに、会社員とフリーランスのいいとこ取りをしたような制度だといいます。
フリーランスゆえに収入や雇用の”安定”は確保されないものの、契約後の一定期間はタニタの業務を請け負うという形で保障されています。
詳しい内容は本書で細かく説明されていますので、気になった方はお手に取ってみてください。
著者は、この制度によって個人の能力が高まり、結果的に会社にも還元されると述べています。
もちろん程度は人によって違うと思いますが、やはり、会社に依存せず自分の力でこれから生きていくのだという覚悟ができることで、学ぼうという意欲も高まるでしょう。
(中略)
それらの結果、社内にいる時よりも、能力開発のスピードが増す——。私はそう考えています。それは成長できる本人にとっては望ましいことであると同時に、生産性が上がるわけですから会社にとっても非常にメリットがあります。(本書p62より)
働きやすい「場」を整える
本書第1部の内容について、私が感じたことが2つあります。
1つは、自己管理能力についてです。
会社に雇われていたときと違い、個人事業(すなわち経営者)になることで、自己管理能力が養われます。
時間の調整、お金の管理、目標設定や達成までの計画立てと遂行…等々。
多くのことを主体的に決める力が身につき、ひいては仕事に取り組む姿勢に結びつくのだと、私も体感があります。
もう1つは、多くの人が主体性を持って働けるように、組織のトップが場を整えることの重要性です。
仮に「海で魚を獲る」ことを仕事に例えるとします。
この場合、海に流れる水をきれいにするため「山や川をきれいにする」ことが、場を整えることにあたります。
私が週末起業からスタートしたとき、私が「魚を獲る」ことだけに集中できていたのは、メンターが場を整えるというスケールの仕事をされていたからです。
そして、いま私の関連事業を支えてくれる仲間がより豊かになれるよう、私も場を整えるために奔走しています。
当記事で詳しく触れられませんでしたが、制度設計のさまざまな障害を乗り越えて、タニタの社員が働きやすい場を整えようと尽力された著者の姿には、敬服するばかりです。
後編では第2部より、実際に「日本活性化プロジェクト」に参入された方のインタビューから学びます。
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