【本】考えよ!――なぜ日本人はリスクを冒さないのか?(前編)
こんにちは。権藤優希です。
今回紹介する本は、元サッカー日本代表監督、イビチャ・オシム氏著書、
“考えよ!――なぜ日本人はリスクを冒さないのか?”
です。
※写真は本書カバーより
2006年にサッカー日本代表の監督に就任。
「オシム語録」と称される数々の名言は、多くのサッカーファンの記憶に残っていることでしょう。
本書は、2010年ワールドカップ南アフリカ大会の開催直前に発行されました。
当時の日本代表チームの可能性について、著者の視点から多角的に論じるという内容が主となっています。
ですが、当記事では本書中盤以降に的を絞って、
・日本のサッカーから浮かび上がってくる、日本人特有の価値観や強く表れる傾向について
・また、それらを著者がどう感じているのか
に注目します。
欧州で数々の強豪チームを率いてきた著者には、日本人はどう映ったのでしょうか。
自分で限界を作ってしまう
脳梗塞で倒れてしまった著者の代わりに、日本代表を率いることになった岡田武史(おかだ たけし)元監督は、ワールドカップでベスト4に入るという目標を公言されました。
当時の日本では、ベスト4という目標が達成できるのか、やや懐疑的な風潮もあったかもしれません。
ですが、著者は大きな目標を発言することに肯定的、むしろ当然だと述べています。
こういう目標を大々的に打ち出すことは、日本では一般的ではないのかもしれない。日本人は、いつも謙遜していて、何かの後ろに隠れているように本音を表には出さない。何を考えているのかをなかなか言わない。それはサッカーの世界においては決して美学ではない。オープンにすべてを明かさねばならないのである。日本人は、堂々と、それをして良いのだ。(本書p91より)
さらに著者は、必要以上に恐れを抱きがちな日本人の心理傾向を指摘します。
そのうえで、自己の限界を取り払い、自信を持つことが重要だと強調しています。
「失敗して罰を受けるならば何もトライしたくない」という深層心理が消極的な姿勢につながるのである。「日本人には責任感がない」とは決して言えない。日本人のメンタリティの問題は「責任感がない」のではなく、その責任感に自分で限界を作ってしまうことではないか。(本書p94より)
自分で考えることをしない
また著者は、日本が規律(ディシプリン:discipline)とルールに基づいた平和な社会を維持していることに、感銘を受けているといいます。
一方で、規律を重視する日本の教育システムに慣れすぎたせいか、規律がなくなって自分で考えなければならない場面に出くわしたとき、日本人は途端に思考が硬直してしまうとも述べています。
日本人は、長い時間ディシプリン生活を送ってきたせいか、サッカーでも決めごとがある状況下においては強い。(中略)
だが、ここで順応、適応、すなわち「瞬時に考える」という条件が加わってくると、その頑強さにヒビが入ってしまうのである。(本書p104より)
1億人を超す人口を誇る日本では、国としてディシプリンや責任感、ヒエラルキー無しでは生きていくことはできないのかもしれない。だから、いつも常に誰かに意見やアドバイスを求めているように思える。自分で考えることをせずにディシプリンやルールを重視した行動をとってしまっている。(本書p105より)
矢面に立って、とっさの対応力を身につけよう
決して、規律やルール、日本の教育システムが悪いというわけではありません。
著者が私たちに問いかけているのは、いざというときに自分で考えられるかということです。
サッカー、あるいは多くのスポーツでは絶えず状況が変化し、その中でも最適な選択をして勝利をもぎ取ることが求められます。
必ずしも練習通り、普段通りとは限らないわけです。
スポーツに限らず、私たちの人生でも、想定外の出来事は起き得ます。
もし規律やルールに依存しすぎると、自分で考えなくなってしまうのではないでしょうか。
そうすると、これまで学んできた規律が通用しない、過去に経験したことがないような場面で、とっさの対応ができなくなるかもしれません。
私はこれまでの起業の道のりにおいて、さまざまな場面で矢面に立ってきました。
矢面に立つということは責任も伴いますし、ときには批判を受ける対象になることだってあります。
ですが、矢面に立ちつづけて、想定外の出来事に立ち向かう経験をたくさんしてきたからこそ、自分で考え、瞬時に対応する力が身についたと自負しています。
常識や過去の体験の中から正解を探すのではなく、自らの選択を正解にする力が身につくと、人生はさらに加速するでしょう。
本書のタイトル『考えよ!』とは、私たち日本人に対する著者からの警鐘なのかもしれないですね。
続きは、後編にてお伝えします。
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