【本】若さに贈る(前編)
こんにちは。権藤優希です。
今回紹介する本は、故・松下幸之助(まつした こうのすけ)著書、
“若さに贈る”
です。
※出典:松下幸之助.com|PHP研究所
パナソニック(旧松下電器産業)やPHP研究所の創設者であり、「経営の神様」と称される偉大な経営者のひとりです。
ご存じの方も多いのではないでしょうか。
本書「若さに贈る」は、1966年に初版発行、2014年に新書版として発刊されました。
「青春とは心の若さである」の座右の銘をもつ著者が、これから世の中に出ていく若者たちに向けて記した1冊です。
著者の半生からうかがえる職業観や人生観は、時代に関係なく、私たちに大切な学びを与えてくれます。
体験をもって知る
家計の貧しさから、9歳のときに単身で奉公に出なければならなくなった著者。
小学校を途中で退学して、火鉢店や自転車店での奉公生活を送ります。
同世代が学校に通うのをうらやましく思いながらも、休みなく働き、社会の厳しさをひと足早く経験されました。
でも、15歳で電灯会社に入社するまでの約6年にわたる奉公生活があったからこそ、商売人としての基礎が身について、ありがたいものだったと振り返っています。
わたしも九つのときに、この船場の店にはいって少年時代を過ごしたのですから、行きたい学校には行けなかったけれども、その六年間を通じて、学校ではえられない、ひじょうに大きな教育を受けたように思います。それは、商人として立つための基本的な知識・態度であり、基礎となるコツの体得です。(本書p38より)
厳しい奉公生活で培われた商売人としての心意気。
だからこそ、少しくらいのことでへこたれない若者になってほしいと、体験(身をもって知ること)を大切にしてほしいと述べています。
砂糖は甘く、塩は辛い。それはだれでも知っています。しかし、それは議論したり、考えたりしてわかるのではない。その甘さ、その辛さを知るには、まずひとくちなめてみることです。体験の尊さはここにあります。もっとも、体験といっても、しょせんはそれぞれ個人的なものであって、その体験が、いつでも、どこででも、だれにでも通用するものとはかぎりません。しかし今日、体験を抜きにした、空疎な議論のなんと多いことか。(本書p35より)
同じお金でも "ねうち" が違う
また、著者が語るお金の価値について、とても興味深い話があるので紹介します。
たとえば、あなたがここに百万円のお金を持っている。あなたはなにか仕事を始めるのに、もう二百万円ほしい。そのばあい、あなたは、先輩かだれかに頼んで借りようと思う。
(中略)
頼まれた先輩は(中略)おそらく、こういうにちがいありません。
「きみは、その百万円をどうしてつくったのか」(本書p74~p75より)
手持ちの100万円はどうやって生み出したのかと尋ねられている場面です。
このとき、その100万円は誰かからもらったのか、自分が努力して貯めたのかで、相手に与える印象は大きく異なるといいます。
「兄からもらったものですが……」
ということだったら(中略)貸してくれるひともあるかもしれない。しかしめったにないでしょう。これがもし、(中略)ぼくは五年間働いてようやく百万円できました、年齢のことも考えて、このあたりで独立したいと思いますので、ということでしたら、同じ百万円でも、そのねうちが大きく上がってきます。二百万円を貸してもらえる率はずっと高くなります。(本書p75より)
たとえ金額が同じでも、自分が努力して作り出したお金には値打ちがある。
そして、値打ちのあるお金はさらにお金を呼び込むと著者は強調しています。
同じお金でも、そういう形で長年かかってためたものは、簡単にひとから貸してもらったのとは、ねうちがまったくちがう。
(中略)
兄さんからもらった百万円と汗水たらしてつくった百万円。このあとの百万円には、よし貸してやろうと思わせるねうちがある。(本書p73、p75、p76より)
地道な精進
約6年の奉公生活。
応援者を呼び込む、お金と ”ねうち” の話。
そのどちらについても、著者が大切にしている地道な精進が根底にあるようです。
自主独立の精神をもつということはたいせつですが、それには、地道な精進というか、それだけの苦労の積み重ね、独立の準備が必要だと思うのです。長い地道な苦労の積み重ね――それがかえって成功への早道でもあるのです。(本書p74より)
これまでに紹介したどの著書でも大切だと書かれている、地道な努力の積み重ね。
「経営の神様」が幼い頃に体得されたその精神が重要であることは、言うまでもないでしょう。
これは先日私が申し上げたことの繰り返しになりますが、効率ばかりに気を取られがちな現代において、これからは効果性(自力が付いているか)が大切だと思います。
自らの胆力を鍛えるためにも、地道な精進や努力というものは、昔も今も必要とされているのですね。
次回、後編に続きます。
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