【本】サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ(前編)
こんにちは。権藤優希です。
今回紹介する本は、正垣泰彦(しょうがき やすひこ)さん著書、
“サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ”
です。
※出典:経営者メッセージ|サイゼリヤ
イタリアンレストラン「サイゼリヤ」創業者で、現在は株式会社サイゼリヤ代表取締役会長を務められます。
1967年に1号店を開業。
本場イタリアのおいしさを低価格で提供するという理念のもと、店舗数を拡大。
サイゼリヤを一大チェーンに育てあげられました。
本書では、40年以上にわたって外食産業に携わられた著者のご経験から、外食経営のポイントを具体例を挙げて細かく説明しています。
当ブログ記事では、外食に限らず経営全般に活かせる考え方に注目して、ビジネスの本質や経営哲学に迫ります。
物事をありのままに見る
本書のタイトル「おいしいから売れるのではない」には、目の前の現実を受け入れて、物事の原理原則に沿って経営をするという著者の自戒が込められているそうです。
例えば、飲食店で一番人気のある料理は、なぜ売れているのか?
店の経営者は、その理由を「おいしいから売れている」と考えがちだ、と著者は指摘します。
なぜなら、人間は何かを考えるとき、先例や成功体験を前提に自分にとって都合の良い、あるいは得をするような結論(経営判断)を導き出してしまいがちだからだ。
(中略)
問題点は、自分の店の料理は美味しいという自分にとって都合の良い結論を無意識のうちに導き出してしまっていることだ。だから近所の繁盛店の動向を確認することに考えが至らない。(本書p29~p30より)
こうした自分本位の考えから脱却して原理原則に近づけるためには、客観的な数値やデータに置き換えることが大切であると著者は述べています。
私は創業期から、お客様が喜んでくれているかどうかを「客数」という数値に置き換えて考えてきた。店が気に入れば再来店してくれるはずだからで、抽象的に「顧客満足度を高めよう」などと言うより、はるかに客観的に検証できる。(本書p31より)
料理の質を高める努力はもちろん大事。
ただそれだけではなく、原理原則に基づいた正しい経営判断を下すためには、客観的な数値やデータを真摯に受け止め、物事をありのままに見ることだといいます。
自分の店の料理、サービスなどはまだまだ大したことがないと自戒し続けること。そうすれば、何が問題なのかを探るときに「立地が悪い」とか、「景気が悪い」とか、外的要因のせいにしてしまって、判断を誤るケースは減るはずだ。
(中略)
客観的な事実に基づき、仮説を立てて、実行し、検証する。これはサイエンス(科学)の手法そのものだ。自分の無知を知り、事実の前に謙虚でなければいけないのは科学者も飲食店経営者も同じである。(本書p31~p33より)
異常事態を前向きに捉える
また著者は、本書第2章の中で、2011年に発生した東日本大震災のときのエピソードを振り返っています。
計画停電の影響による工場の稼働削減や、一部の食材の入手困難など、サイゼリヤはこれまでに経験したことのない事態に見舞われたそうです。
しかし、工場での作業工程の見直しやメニュー数の絞り込みなど、普段なら思いもつかないアイデアで乗り切ったといいます。
異常事態に直面したときの心構えはチェンジとチャレンジだ。物事を変えざるを得ないとき(=異常事態)なのだから、新しいこと(=チェンジ)に前向きに挑戦(=チャレンジ)すべきだ。異常事態のときは、日頃やっている、いろいろなことをやめざるを得ない。これは前向きに捉えると、日頃やっていることを①「やめられる」し、②「絞り込むことができる」ということだ。
(中略)
つまり、異常事態のときには、平時にはできないことができて、平時には考え付かないことをひらめくかもしれないということだ。(本書p94~p95より)
ちなみに著者にとっての最初の異常事態は、第1号店を開業してからわずか7カ月後、お客同士のトラブルによって火事が起こり、店が燃えてしまったことだそうです。
店をやめようかという思いがよぎったものの、それでも創業前の気持ちを思い出して奮起。
このとき必死に知恵をつけたことが、飲食経営の土台になっていると仰います。
今は苦しいかもしれないが、これまでとは比べ物にならないほど魅力のある商品やサービスを作るんだ、と前向きに考えたほうが商売はうまくいく。私はそう信じている。(本書p96より)
頼もしいスタッフの存在
昨今の社会情勢により、さまざまな産業、とりわけ飲食業界が厳しい状況におかれていることは、多くの方がご存じかと思います。
私も現在、飲食店の経営に携わっています。
もちろん感染症の予防対策が第一であることは言うまでもないですが、通常のような営業ができなくなり、さまざまな制約を目の当たりにしたときは、私も頭を抱えました。
ただ、お店を支えてくれる頼もしいスタッフたちと一緒に、新メニューの開発、新しい業態への移行、近隣店舗との提携など、できることを即座に実行に移してきました。
通常時だったら、こうした発想に至ることはなかったかもしれません。
知恵を絞り、必死になって共に汗をかいてくれるスタッフがいることに感謝しつつ、私自身がこの状況を乗り越えるためにも、さらに負荷をかけてチャレンジをします。
異常事態をどう捉えるか。
さまざまな困難を克服された著者のメッセージには重みがあり、私にとって大きな励みとなりました。
次回、後編に続きます。
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