【本】火の玉ストレート プロフェッショナルの覚悟(前編)
こんにちは。権藤優希です。
今回紹介する本は、元プロ野球選手・藤川球児(ふじかわ きゅうじ)さん著書、
“火の玉ストレート プロフェッショナルの覚悟”
です。
出典:藤川球児【kyuji22】 (@kyuji22fujikawa) | Twitter
1998年にドラフト1位で阪神タイガースに入団。
最多セーブ記録(通算243セーブ)を誇る、絶対的守護神として長きにわたり活躍されたピッチャーです。
現在は阪神タイガースの特別補佐に就任され、また野球解説者としてもご活躍中です。
本書は、プロ入りから現役引退までのさまざまなエピソードを交えて、藤川さんのプロ意識や勝負哲学などを学べる、野球ファン必見の一冊です。
なお先日、私は仕事の関係で、講演にて藤川さんのお話を直接伺う機会がありました。
元野球少年として、プロの選手にお目にかかれたことはとても光栄です。
本書の内容と併せて、藤川さんから伺ったお話もお伝えしたいと思います。
ストレートという"一芸"を極める
藤川さんの代名詞ともいえる「火の玉ストレート」の誕生秘話が本書で語られています。
もともとは色々な球種を投げ分ける技巧派だった藤川さん。
プロ入り6年目に投球フォームの修正に取り組まれ、伸びのあるストレートを手に入れられたそうです。
このストレートを一躍有名にしたのが、2005年の巨人・清原和博さんとの対戦。
渾身のストレートは150キロを超え、空振り三振に倒れた清原さんは「火の玉や」と舌を巻いたのです。
打者は投手によって育てられ、投手は打者によって磨かれる。
僕は、清原さんによって磨かれた。(本書p55より)
この「火の玉ストレート」のエピソードについて、藤川さんは講演で次のように仰っていました。
清原さんとの対戦がきっかけで、プロになるということは、ひとつの専門家になるということだと知りました。
手応えを感じていたストレートを、自分の”一芸”として極めようと思ったのです。
プロとは、秀でた”一芸”で勝負する世界。
清原さんから火の玉と称されたストレートは、まさに藤川さんの軸となる”一芸”に変貌したのです。
野球人である前に社会人であれ
とはいえ、入団してから一軍に定着するまでの約5年、ひたすら練習に明け暮れる”下積み時代”を経験されたそうです。
それでも、5年間必死で猛練習したことにより、プロの世界で戦えるだけの体力が身についたといいます。
また、藤川さんが入団されたときの阪神の監督は、故・野村克也さん。
野球のみならず、生活態度まで厳しく指導されたことについて、次のように語っています。
率直にいって、プロ野球選手に対して生活態度を指導するのは越権行為ではないかと感じていた(中略)。
しかし、プロ野球の世界で5年、10年と経験を重ねるに従って、野村監督の言葉が僕の心のなかで響きを増してきた。
「野球人である前に社会人であれ」とは、なんとまっとうな言葉かと今では思える。(中略)
当時、野村監督の言葉を理解できなかった自分がもどかしいが、それでも後年、身になったことを思えば、指導者に恵まれた幸運を感じる。(本書p29より)
野球選手である以前に、人としての土台、いわば基礎をきちんとする。
高卒ルーキーのときは理解できなかった野村さんの教えが、いかに大きかったかを打ち明けています。
さらに、藤川さんは基礎の重要性について、講演でこう仰いました。
一軍と二軍とでは責任の重さが全然違います。
積み上げで努力するのではなく、必要な結果から逆算して練習しなければいけないと痛感しました。
プロとして、最初のほうに苦しんで、基礎を深く深く修正してきた人のほうが、長く活躍できると思います。
下積み期間で、どれだけ基礎を築き上げられるか。
厳しい環境に身を置いて、土台となる基礎を徹底することが、長期にわたって大きな成功を収める要因なのですね。
自分を磨き、基礎をつくる
私も学生時代は野球に力を注いでいたので、本書の内容や、講演における藤川さんのお話ひとつひとつに引き込まれ、胸が熱くなりました。
学べたことは、野球に限らずビジネスにも通ずることばかりです。
火の玉ストレート誕生のきっかけとなった清原さんとの対戦。
人を成長させるのは、やはり人なのですね。
私が「人は人で磨かれる」と教わってきたこととリンクし、仕事を通じて多くの人と会うことがますます楽しみになりました。
また、長く繁栄するために大切なことが基礎の徹底。
思うような結果が出ないときでも地道な努力を続けて、根を深く張っていこうと思いました。
後編では、藤川さんがメジャーリーグへの挑戦を経て、阪神タイガースに復帰されたときのエピソードを中心にお伝えします。
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【本】届け先のわからない手紙、預かります 漂流郵便局 お母さんへ(後編)
こんにちは。権藤優希です。
前回に引き続き、久保田沙耶(くぼた さや)さん著書、
“漂流郵便局 お母さんへ”
を紹介します。
※前編はこちら
前編では、漂流郵便局に届いた、亡き母へ宛てた手紙の一部を紹介しました。
後編では、著者の久保田さんと、漂流郵便局の局長を務められる中田勝久さんの想いをお伝えします。
(前編に掲載したYouTubeにお二人が出演されています。)
できるだけ長く続けたい
香川県の粟島郵便局に45年間勤めたという、86歳(2020年時点)の中田さん。
思い入れのある旧局舎を、自ら買い取って管理されていたそうです。
瀬戸内国際芸術祭の制作のため旧局舎を訪れた久保田さんのお願いを受けて、漂流郵便局の局長に就任。
芸術祭終了後も漂流郵便局を続けたいという想いから、開局から7年以上経った現在も、届いた手紙ひとつひとつに目を通され、大切に保管していると仰います。
「手紙を出しても返事が返ってこないことはわかっているけれど、出し続けたい。書き続けたいんです」。そんなメッセージも多くいただきます。実際、娘さんや息子さんを亡くされた方が、毎日毎日欠かすことなく、行き場のない想いを綴られ、投函されたであろう手紙もたくさん届きます。ご自身の後悔、怒り、悲しみから、天国にいる方への報告や日常の会話まで。書くことで気持ちに整理をつけ、書き続けることで現実と向き合っている。お便りを通して、懸命に前へ進もうとするその過程を感じます。(本書p140~p141より)
想いが重なり、心をあらわす地層ができる
何気ない日常や人との出会いから生まれる言葉を、自身の作品のテーマとして重要視される久保田さん。
漂流郵便局に届いた1通1通の手紙は、太古で例えるならば化石のようなもの。
そして、手紙を書いた人の想いが幾重にも積み重なって、”人の心をあらわす地層” のようになるとお話されています。
ハガキを用意し、そこに収まるよう文章をととのえて、住所と宛名を書いて切手を貼り、ポストへ投函する。ボタンひとつでだれかとつながるSNSに比べ、なんと手間のかかることでしょう。しかしこの手数の多さにこそ、「手紙を書く」ということが現代において通信以外の役割をも果たす可能性があるのかもしれません。
(中略)
ここで大切なのは意思疎通そのものではなく、意思疎通を図ろうとする、その気持ちにあるのではないでしょうか。そしてそれはまだ言葉になる前の、まだ表情にかわる前の、まだ思いにとどく前の、心そのものの様子なのかもしれません。(本書p143~p144より)
大切な誰かを想う人の心。
それを、久保田さんは漂流郵便局という形で表現されたのですね。
人の心は、人の心が動かす
あらためて、私は本書を読み、人の想いの尊さや儚さに触れて、心が揺さぶられました。
伝えたいことがあるのに、伝える人がいない。
行き場のない想いを抱えている方の気持ちは計り知れないものがあります。
そして、手紙に込められた想い、久保田さんと中田さんの想いなど、さまざまな人の想いによって漂流郵便局がつくられていることを学びました。
いつの時代も、人の心を動かすのは人の心。
私も、自分の想いと周りの人の想いを大切に生きていこうと胸に刻みました。
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【本】届け先のわからない手紙、預かります 漂流郵便局 お母さんへ(前編)
こんにちは。権藤優希です。
今回紹介する本は、久保田沙耶(くぼた さや)さん著書、
“漂流郵便局 お母さんへ”
です。
出典:
久保田沙耶 (くぼた さや)|プロフィール・連載・記事|クリエイターと読者をつなぐサイト cakes(ケイクス)
東京藝術大学大学院美術研究科修了(博士)。
個展およびグループ展などで多数の作品を発表されているアーティストです。
漂流郵便局とは、香川県の粟島にある、使われなくなった古い郵便局の建物を利用した著者のアート作品です。
届け先のわからない手紙を預かる郵便局として、2013年瀬戸内国際芸術祭に出展。
2020年4月までに累計4万通もの手紙を預かっているのだそうです。
※参考(YouTube)
2015年に出版された書籍『漂流郵便局』に続く本作『漂流郵便局 お母さんへ』では、漂流郵便局に届いた手紙の中から、おもに母親に宛てられた手紙を取り上げて紹介しています。
行き場のない想いを預かる
著者は、漂流郵便局にはじめて届いた手紙のことを、次のようにお話されています。
開局の2日前、一通目の手紙が届きました。「亡くなったお母さんへ いまだったら言えるたくさんのありがとう」と書かれ、一輪の赤いカーネーションの絵がそえられていました。予期せず届いた手紙と切実な文字の形につよく心をうたれたのを覚えています。(本書p19より)
漂流郵便局に届く手紙は、未来や過去の自分に宛てたもの、大好きな恋人に宛てたものなどさまざま。
特に、本書で紹介されているすでに亡くなった家族へ宛てた手紙は、多くの人の心を打つことでしょう。
自分を産み育ててくれた母へ。
伝えたくても伝えることができなかった行き場のない想いが、漂流郵便局に集まるといいます。
手紙紹介
本書に掲載されている手紙の一部を紹介します。
(本書p26より)
お母さんが亡くなって八ヵ月たち、
やっと、もういないと、理解しました。
今、思うのは、最期まで前向きに
がんばっていたこと!
私が、お母さんの立場なら
あんなに、頑張れなかったと思うくらい…
すごいと思います。
改めて、今頃ですが、尊敬します!
お母さんみたいには頑張れないけど、
頑張って生きるね
(本書p94より)
60代になって今は後悔することばかりです。
元気な時は言いたいことを言って、ケンカした時もあったけど、年をとって、
母が病気になった時、「母ちゃん、今までごめんなさい♡大好きだよ」と言って抱きしめてあげたかったけど、その時は気恥ずかしくて、出来ませんでした。
ごめんなさい。
漂流郵便局で、私の気持が天国の
母ちゃんに届きますように…。
「母ちゃん、大好きだよ~!」
今まで、ありがとう~。
<追伸>
天国でもお父さんと仲良くネ!!
想いを言葉にすること
私も、掲載されている手紙を読んで、涙がこみ上げてきました。
本当は伝えようと思っていたのに、伝えることができないまま会えなくなってしまったというさみしさやせつなさ。
そして、偉大な母への愛情や感謝の気持ち。
後悔することの良し悪しを論じるものではないですが、日頃から想いをきちんと言葉にして伝えることの大切さを感じずにはいられませんでした。
後編では、漂流郵便局に対する著者の想いをお伝えします。
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【本】結果を出すのに必要なまわりを巻き込む技術(後編)
こんにちは。権藤優希です。
前回に引き続き、小林正典(こばやし まさのり)さん著書、
“結果を出すのに必要なまわりを巻き込む技術”
を紹介します。
※前編はこちら
前編では、著者のご経験から、
・わくわくしながら、仕事を楽しむこと
・明確で、周囲の共感を呼ぶようなビジョンを持つこと
が、まわりの人を巻き込んで、協力を得るために大切であると学びました。
他にはどのようなことが必要なのでしょうか。
後編では、本書第4章からピックアップしてお伝えします。
リアクションの早さで信頼を得る
著者が初めて管理職に就任されたときから、ずっと心がけていることがあるそうです。
そのうちのひとつが、クイックレスポンス。
得意先などから質問を受けたときは、返事や返信を可能な限り早くすることを徹底されています。
早くリアクションをする人は信頼できるからです。
(中略)すぐに返事ができない案件でも、「いつまでに返事をする」とすぐに返してくれる人は信用できますよね。(本書p203より)
反応のスピードは、仕事を前進させるだけでなく、周囲の信頼を勝ち取ることにつながるのですね。
コミュニケーションを増やし、いい雰囲気のチームをつくる
私が思う結果が出せるチームの最低限の条件は、「チームの雰囲気がいいことだ(ただし仲良しクラブではない)」と考えています。(本書p224より)
と著者が述べるように、組織の雰囲気はとても大切だと私も思います。
仕事においては結果をつくることが求められます。
そのために、本音を言い合えるコミュニケーションが重要であることは、『仕事は人間関係が9割(著:宮本実果)』という本の紹介でも申し上げました。
著者は、本音を言い合えるような組織にするために、部内メンバーとのコミュニケーションの量を増やして、良好な人間関係を構築されたそうです。
言いたいことを言い合える雰囲気や、チームに貢献するといった意識、また関係者をやる気にさせるような熱いパッションがあって初めて、困難に立ち向かうことができます。
したがって、口論が許されるくらいの本音ベースのオープンな雰囲気のもとで進められるプロジェクトは、大きな成果を得ることが多いのです。(本書p224より)
真剣ではあるけど、深刻ではない
本書を読み、私は「お互いに本音を言い合える、オープンな雰囲気」の大切さをあらためて感じました。
昨年の12月、私は経営仲間と一緒に箱根に行きました。
これは合宿と称して、今後の経営方針を決めることが目的です。
2日間にわたり、仲間たちと本気でミーティングをしました。
ときにはお互いの意見がぶつかり合ってヒートアップすることもありましたが、本音で議論できたからこそ、有意義な時間になったと思っています。
会議のあとは、みんなで美味しい食事とお酒を楽しみ、カードゲームをしながら親睦を深めました。
「真剣にやるけど、深刻にならない」とメンターから教わったことをそのまま体現したような合宿は、仲が良くて、かつ本音を言い合える、雰囲気のいいチームが持つエネルギーに気づかせてくれたのです。
チームの力を高めるための学びが詰まった一冊でした。
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【本】結果を出すのに必要なまわりを巻き込む技術(前編)
こんにちは。権藤優希です。
今回紹介する本は、小林正典(こばやし まさのり)さん著書、
“結果を出すのに必要なまわりを巻き込む技術”
です。
江崎グリコ株式会社 チョコレート・ビスケットマーケティング部カテゴリーマネージャー。
同社を代表する商品『ポッキー』の売上を5年で50億円伸ばすなど、数々のヒット商品を生み出されます。
2015年には、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」にご出演。
妥協を許さない仕事に対するこだわりが大きく取り上げられました。
※参考:小林正典(2015年6月22日放送)| これまでの放送 | NHK プロフェッショナル 仕事の流儀
競争の激しい菓子業界では、ヒット商品は社内の各部署(チーム)の連携・協力なくしては生まれないのだそうです。
本書では、チームの人を巻き込んで結果を出す方法を、著者の実体験をもとに紹介しています。
ヒット商品を生み出す秘訣を一つ挙げるとすれば、チームの力を最大限に引き出し、まわりを巻き込んでいくこと。これに尽きるのではないかと考えています。(本書p9より)
ブランディング、マーケティングについても学べる1冊ですが、今回はタイトルの通り、結果を出すチームをつくるために必要なことに注目します。
仕事を楽しむ
同社が商品開発において大事にしている言葉が「創る、楽しむ、わくわくさせる」。
創意に満ちたチャレンジや面白いアイデアは、仕事を楽しむからこそ生まれると仰います。
商品開発を楽しまなければ、ヒットにつながる商品は生まれないと思っています。(中略)
そういうときこそ、チームリーダーは「楽しむ」という商品開発の原点に立ち返る必要があります。(中略)
マーケティング担当者が「楽しんで創る」ことから、お客様のわくわくは生まれるのですから。(本書p34より)
まずは、リーダー自身が仕事を楽しんでいること。
自分が仕事に対してわくわくしていると、その気持ちは周りの人にも伝わります。
明快ですぐれたビジョンが人を動かす
商品開発をめぐり、ときには部署間での対立を乗り越えなければなりません。
「このような商品をつくりたい」と企画部が提案しても、「技術的に難しい」と製造部が突き返すこともしばしば。
そこで必要になるのが、ビジョンを明確にすること。
著者は、ある商品の市場シェアトップを取り戻すために、関係者全員の共感を呼び起こすようなビジョンを明確に示すことで、対立を乗り越えたそうです。
「『アーモンドチョコといえばグリコ』を取り戻そう」
(中略)このビジョンを掲げることによって、製造に限らず、研究所、技術、営業、広告、経営陣など関係するすべての部署が、力を終結させることができたと思っています。
(中略)明快ですぐれたビジョンは関係者を動かし、困難を乗り越える力を与えてくれるのです。(本書p81より)
ビジョンに人が集まる
ここまでの内容から、
・自分自身が楽しんでいること、わくわくしていること
・ビジョンが明確であること
が、周囲の人を巻き込み、協力を得ていくために必要な要素だと学びました。
(他にも多くの学びがありますが、詳しくは本書をお読みいただきたく思います)
私も、会社員から起業の道を選択したとき、一緒に立ち上げる仲間を探すことから始めました。
多くの人に私のビジョンを伝え続けてきて、
・私自身が楽しんでいるとき、わくわくしているときは、うまく相手に伝わった
・伝えれば伝えるほど、ビジョンが明確になっていった
という体感があります。
まわりを巻き込むといっても、相手に動いてもらうことだけを求めてはうまくいかないでしょう。
まずは、自分がいつもエネルギー高く振る舞い、ビジョンを磨きあげる。
人を集めるのではなく、ビジョンに人が集まるような自分になることが大切だと思い、私もビジョンを磨き続けています。
本書後半の内容は、後編にてお伝えします。
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【本】逆境に克つ!サンリオピューロランドを復活させた25の思考(後編)
こんにちは。権藤優希です。
前回に引き続き、小巻亜矢(こまき あや)さん著書、
“逆境に克つ!サンリオピューロランドを復活させた25の思考”
を紹介します。
※前編はこちら
前編では、ハンデや制約はとらえ方次第で強みに変えられるという著者の考えを学びました。
後編では、本書「おわりに」で述べられている、著者の半生にフォーカスします。
本書のうちのごく一部、わずか15ページに込められた著者の思いに触れたとき、目の奥が熱くなることでしょう。
さまざまな逆境と向き合う人生
本書「おわりに」の内容(著者の半生)をまとめます。
・「女性を守る仕事をしたい」という思いから、教員を志す
・18歳のとき、3歳年上の姉が病気で亡くなり、教員とは違う道を選択
・サンリオに入社
・結婚を機に退職。専業主婦になり、3人の子供をもつ
・34歳のとき、次男を事故で亡くされ、離婚
・37歳のとき、化粧品会社に就職。のちに、サンリオの化粧品事業に復帰
・2008年、子育て支援のNPO法人と、女性支援の社内ベンチャーを立ち上げ
・2011年、東京大学大学院に進学。2013年、修士課程修了
・2014年、サンリオエンターテイメント顧問就任
非常に独特なキャリアであるとともに、壮絶な体験をなさったことがおわかりいただけると思います。
本書で挙げられている、さまざまな逆境に対するとらえ方の数々。
それらは、著者のもとに訪れた苦しい現実を直視せざるを得なかった状況から生み出されたのかもしれません。
私の人生は、思いがけないことの連続でもありましたし、逆境に立つ場面の連続でもありました。
(中略)
なんぼのものかと問い、それに答えられない自分を直視せざるを得ず、答えるだけの言葉を持ちたいと考えて、私なり努力をしてきたように思います。(本書p154~p155より)
「お母さん」のようなリーダーになる
著者がサンリオピューロランドの館長に就任されたとき、それまでテーマパークの運営に携わったことはなかったそうです。
このとき著者が目指したリーダー像は「みんなのお母さん」。
ぐいぐいと引っ張るリーダーというよりは、スタッフのことを大切な自分の子供だと思って接し、見守りとお手伝いに徹したと仰います。
「お母さん」は、我が子の可能性を、疑うことなく信じています。我が子は絶対に「やればできる子」、もしも今、うまくいっていないとするならば、やれない理由があるはずです。
(中略)
我が子の可能性を絶対的に信じる「お母さん」になることです。実際に、「我が子たち」は本当に素晴らしい子たちばかりでした。(本書p122~p124より)
専業主婦として子育てを経験された著者ならではの考え方。
子供を思う母の強い気持ちというものは、子供に限らず、多くの人の心に届くのですね。
著者は、仕事をしていない時期が長かったとしても、「ブランクのある人には、続けてきた人とは違うキャリアの積み方がある」とエールを送っています。
自分の可能性を信じるから、相手の可能性を信じられる
私はメンターからいつも「過去に興味はない。可能性に焦点を当てるんだ」と教わってきました。
そして私も、一緒に事業を立ち上げた仲間は必ず結果をつくることができると、仲間の可能性を心から信じています。
なぜなら、私自身がさまざま経験を乗り越えて、目標を達成しつづけてきたから。
さらに高い目標を掲げてチャレンジ中の今でも、「自分なら絶対に結果を出せる」と自分の可能性を心から信じているからです。
著者がサンリオピューロランドのスタッフ、もといサンリオピューロランドそのものの可能性を「我が子」のように信じられるのは、幾多の逆境を乗り越えることで、ご自身の可能性を信じられるようになったからだと私は感じました。
たくさんの笑顔を生み出すテーマパークの背景には、可能性を信じる思いがある。
女性に限らず、多くの方に読んでいただきたい一冊です。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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【本】逆境に克つ!サンリオピューロランドを復活させた25の思考(前編)
こんにちは。権藤優希です。
今回紹介する本は、小巻亜矢(こまき あや)さん著書、
“逆境に克つ!サンリオピューロランドを復活させた25の思考”
です。
出典:トップメッセージ | 株式会社サンリオエンターテイメント
株式会社サンリオエンターテイメント代表取締役社長。
1983年にサンリオに入社。
結婚退社後に約11年を専業主婦として過ごされたのち、化粧品会社を経てサンリオに復帰されます。
2016年にはサンリオピューロランド館長に就任。
2014年からの4年間で来場者数を4倍に伸ばし、過去最高の記録を塗り替えられます。
本書は、低迷していたサンリオピューロランドの状況をどのようにとらえて立て直しを図ったのか、著者のご経験をもとに綴られています。
本書のメッセージは、ビジネスの視点だけでなく、女性としての生き方にも大きな影響を与えるのではないでしょうか。
ハンデは強みに変えられる
サンリオピューロランドは、「ハローキティ」などで有名なサンリオキャラクターのテーマパークで、場所は東京都多摩市にあります。
サンリオならではの世界観で好評を博しているものの、都心からのアクセスにおいて不便な点や、オープンから30年が経過したことによる施設の老朽化を懸念する声が上がっているのだそうです。
しかし著者は、一見すると不利にも思えるような状況・ハンデも、とらえ方次第で強みに変えられると強調しています。
・ピューロランドまでの移動時間も、友人同士でワクワクを共有する楽しい時間になる
・子どもの頃に訪れた懐かしさ(味わい深い古さ)を求めるお客様もいる
本書には、このように苦しい状況から活路を見いだすとらえ方のヒントがたくさん散りばめられています。
長年苦しんできたテーマパークにはもう復活の目はないと見るのか、逆境には、這い上がる可能性が満ちていると捉えるのか。
私は、後者だと確信していました。(本書p9より)
制約があるぶん、やることは明確になる
テーマパークである以上、立地や設備環境・キャパシティなど、変えたくても変えられない(あるいはすぐには変えることが難しい)さまざまな制約がつきものです。
こうした制約ですらも、著者はサンリオピューロランドの個性・長所であるととらえて、その中にある可能性を探ります。
もしも制限がなかったら、そこで何をするかは、砂漠の中でダイヤモンドを探すような行為に近いと思います。あちこちに可能性がありそうで、どこから探したらいいかわからないような状態です。でも、こぢんまりしていると「よし、ここから探すんだな」と可能性を深堀りする覚悟も決まります。
(中略)
制約があるということは、やれること、やるべきことが明確であるということ、そこに集中できるということだと私は思っています。(本書p39~40より)
一時の不自由を選択する
制約や制限というものは、「自由にやりたい」という考えが強い方にとっては、窮屈に感じるかもしれません。
私がビジネスの経験が全くない中でも立ち上げることができたのは、メンターを見つけて仕組みを提供していただき、どうやったらうまくいくかを基礎から学んだからだと思っています。
ビジネスを興そうと思ったら、普通は仕組みやアイデアから考えないといけません。
大阪という目的地に到達するために、”新幹線”という名の仕組みをゼロから自分で考えてつくるようなものです。
会社員の経験しかなかった私には、それこそ砂漠の中のダイヤを探すようなもので、おそらく無理だったと思います。
仕組みを提供していただいたからこそ、立ち上げに必要な、やるべきことに集中できました。
そして、どんな仕組みにも、相応の制約が伴います。
メンターから「将来自由になるためには、一時的な不自由を選択すること」と教わり、制約の中でタイムマネジメント能力や資金調達の力など、経営に必要なスキルを鍛えてきました。
制約とは方向性を示してくれるものなのですね。
本書にはまだまだ学びがたくさんありますが、後編では著者の経歴をテーマに取り上げようと思います。
経営者として、そして女性として、幾多の困難を乗り越えられた著者の波乱万丈な半生には、胸を打たれます。
※補足※
本書の刊行は2019年9月です。
感染症の流行により、サンリオピューロランドは2020年2月22日に臨時休館を発表。
現在は感染症防止対策のもと、来場予約制で営業中です。
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